頚椎症
頚椎症性神経根症の原因と症状、治療について
あなたは首や肩、腕が痛くなり、手にもしびれを感じ、病院を受診すると「頚椎症性神経根症」ですねと言われたのではないでしょうか。
聞き慣れない頚椎症性神経根症と言われ、どのような病気なの?何が原因?どのような治療があるの?など、わからないことだらけで不安になられていることと思います。
今回はあなたの不安が少しでも解消できたらと思い、頚椎症性神経根症の原因と症状、治療について、どこよりも詳しく解説します。
1.頚椎症性神経根症の原因
1-1 加齢変化による頚椎の変形(変形性頚椎症)
頚椎症性神経根症は加齢変化による、骨棘という骨組織の新生が原因で起きる変形性頚椎症から始まります。
骨棘は加齢変化による椎間円板の扁平化、筋力の低下、首への大きな負荷がかかることなどが原因で、鈎椎関節、椎間関節の不安定化が進み骨関節炎が起きて形成されます。
この骨棘が頚神経に刺激を与えることによって、筋緊張が起こり慢性的な首こり、肩こりが生じます。
1-2 日常生活の過度の負担
頚椎症性神経根症は日常生活の過度の負担や自然治癒力の低下が引き金となって、慢性的なこりから痛みやしびれなどの症状に悪化していきます。
頚椎症性神経根症が悪化しやすい日常生活は、次のようになります。
1.パソコン作業、スマートフォンの長時間の使用。
2.建設作業などで、上を向く仕事が多く力仕事をする。
3.ヘルメットなどをかぶって作業をする、バイク運転手や現場作業。
これらの負担が日常的に首に積み重なり自然治癒力の範囲を超えると、爆弾のスイッチが押されたように頚椎症性神経根症の痛みとしびれが現れます。
1-3 筋肉の過度の緊張による血流不全
頚椎症性神経根症の痛みの原因の一つに筋肉の血流不全があります。頚椎症性神経根症は頚神経に影響を与えるため、首、肩の筋肉が緊張しやすく強い肩こり、首こりが現れます。
筋肉の緊張状態が続くと血流不全となり、プロスタグランジン、ブラジキニン、セロトニンといった発痛物質が産生され、侵害受容器が受け取って脳に送られ痛みが認識されます。
1-4 トリガーポイントの形成
筋肉の血流不全が続くと、筋肉が傷つきトリガーポイントが形成されやすくなります。トリガーポイントとは筋肉の硬いしこりのようなもので、痛みの引き金となる点です。
トリガーポイントを押すと飛び上がるほどの痛みが現れることから「ジャンプサイン」と呼ぶこともあります。
1-5 痛みの悪循環
人間が痛みを感じるときはプロスタグランジン、ブラジキニン、セロトニンなどの発痛物質が産生され、神経を通って脳に伝わります。脳に痛み刺激が伝わると脳は様々な反応を起こすのですが、その一つに副腎を刺激してカテコールアミンの分泌が促進されます。
カテコールアミンの働きは血管を収縮させる作用があります。頚椎症性神経根症で首、肩の筋肉の血流が悪くなっている状態で、さらにカテコールアミンの作用で血管の収縮が促進され症状がさらに悪化していきます。
2.頚椎症性神経根症の症状
2-1.慢性的な首、肩、肩甲骨内側のこり
加齢変化によって椎間円板の周囲の組織(線維輪)の部分断裂、鈎椎関節や椎間関節に骨棘が形成され、周囲の神経が刺激を受け首、肩周囲の筋肉が緊張し慢性的な首、肩、肩甲骨内側のこり感が起こります。
2-2.首、肩の痛み
慢性的な筋肉の緊張が続くと、筋肉の血流が悪くなり「ブラジキニン」「ヒスタミン」「プロスタグランジン」などの発痛物質が産生されます。産生された発痛物質によって、侵害受容器が刺激を受け鋭敏になることによって痛みが起こります。
これは、筋筋膜性疼痛症候群の痛みの発生機序の考え方の一つです。
2-3.腕の痛み
トリガーポイントが形成されると、その部位から離れたところに痛みや知覚鈍麻、知覚過敏の症状が起きることがあります。これを関連痛といいます。
頚椎症性神経根症の腕の痛みは首、肩、肩甲骨周囲に形成された、トリガーポイントの関連痛であることが多くあります。
2-4.自律神経失調症(頭痛、吐き気、目まいなど)
頚椎には自律神経の副交感神経が分布し、主に内臓を調節するという大きな役割があります。頚椎が変形したり、首こりがひどくなったりすると、自律神経の調節ができなくなり内臓調節のバランス崩れ自律神経失調症のような頭痛、吐き気、目まいなどの不定愁訴症状が起こります。
2-5.腕、指のしびれ
頚椎症性神経根症のシビレの種類には、持続的に起きているしびれと間欠的に起きるしびれがあります。
持続的に起きているしびれは指先に多く起きていて、神経の根元で骨などの硬い部分で神経や血管が刺激されている可能性があります。一方、間欠的に起きるしびれは、神経の根元よりも末梢で筋肉などの柔らかい部分で、神経や血管が刺激されている可能性があります。
持続的に起きている指先のしびれは治りにくく、間欠的に起きているしびれは治りやすいという特徴があります。
3.頚椎症性神経根症の西洋医学の治療
頚椎症性神経根症の病院の治療は投薬、リハビリ、注射、手術になります。
3-1.処方される主な薬
・NSAIDsのお薬(非ステロイド性抗炎症薬)
NSAIDsとは抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用を有する薬剤の総称です。主な薬剤として、バファリン、ロキソニン、ボルタレンなどがあります。
副作用として、胃腸障害、腎機能障害、肝機能障害、血小板、心血管障害、アスピリン過敏症による喘息、じんま疹などがあります。
・神経性疼痛緩和薬(リリカ)
神経性疼痛緩和薬とは、神経障害性疼痛がある時に処方されるお薬です。神経障害性疼痛とは神経が障害を受けて、ヒリヒリと焼け付くような痛みや、ピリッと電気が走るような痛み、しびれるような痛みが生じる痛みのことをいいます。
有痛性糖尿病性神経障害、三叉神経痛、脊髄損傷後神経痛、ヘルニア、帯状疱疹後神経痛などの神経疾患によく処方されます。
副作用として眠気やふらつき、浮腫、体重増加、吐き気、腎不全などがあります。
・筋弛緩薬(ミオナール、テルネリンなど)
筋弛緩薬は頚椎症性神経根症で、緊張状態にある首、肩の筋緊張を緩和させる目的で処方されるお薬です。
副作用として、発疹、眠気、頭痛、目まい、吐き気などがあります。
・ビタミン12製剤(メチコバール)
ビタミン製剤は末梢神経障害の改善を目的として処方されるお薬です。ビタミン12は神経の働きを調節するうえで欠かせない栄養であるため、お薬で補い痛んだ末梢神経を修復しシビレを改善するために処方されます。しかし、効果があまりみられないことが多くあります。
副作用として発疹、胃不快感、食欲不振、悪心などがあります。
・抗不安薬(デパス)
抗不安薬とは、不安を改善する作用のあるお薬です。デパスはその他に、睡眠作用、抗けいれん作用、筋弛緩作用もあり、頚椎症性神経根症の筋緊張を和らげるために処方されています。
筋弛緩作用のあるお薬は、緩んで欲しい首、肩の緊張だけを緩めるのではなく、全身の緊張が緩みます。ですから、足の筋肉が緩みすぎてふらつきや転倒の危険性があるので注意が必要です。また、眠気や依存などの副作用もあります。
デパスは神経症、心身症などがあって、不安や筋緊張がある時に処方されても問題ないのですが、心身に問題のない健常者が多く服用すると強い副作用に苦しむことになるので慎重に服用しなければなりません。
3-2.リハビリ治療
・頚椎牽引
病院の頚椎疾患のリハビリでよく行われるのが、頚椎牽引です。頚椎牽引の歴史は古く、次のような効果を期待されて行われています。
- 椎間関節周囲の軟部組織の伸張。
- 椎間板、椎間関節の軽度の変形、変位の矯正。
- 椎間関節の離開、免荷。
- 椎間孔の拡大化。
- 攣縮筋の弛緩。
- マッサージ的効果による循環障害、促進。
しかし、このような効果はほとんどみられないばかりか、痛みが悪化する場合もあるのが実情です。ですから、最近では頚椎牽引を行わない病院も出てきています。
・電気治療
電気治療は主に筋肉の血行改善、筋緊張の改善、痛みの緩和を目的に行われます。しかし、頚椎症性神経根症ではあまり効果がみられないのが実情です。
・温熱治療
温熱治療はホットパックなどで筋肉を温め、血行をよくして筋緊張を和らげる目的で行われます。
・手技療法
病院では主に理学療法士(PT)の国家資格を持っている施術者が、マッサージや運動療法を用いて症状を改善していきます。
頚椎症性神経根症のリハビリは頚椎牽引、電気治療、温熱治療などの物理療法だけでは改善が難しく、理学療法士の施術を同時に行うことが大切です。もし、あなたが物理療法だけのリハビリを受けているならば、違う病院を見つけられた方がいいと思います。
3-3.神経ブロック注射
神経ブロック注射は局所麻酔薬を神経の近くに注射をすることによって、一時的に神経を麻痺させ痛みの信号を脳に伝わらないようにする治療法です。
また、注入された麻酔薬は神経の興奮を抑え、筋肉の緊張緩和、血流の改善作用もあるため、痛んでいる筋肉を改善する働きもあります。
頚椎症性神経根症でブロック注射が行われるのは、痛みが強いときで星状神経節ブロック、腕神経叢ブロック注射などが行われます。
頚椎のブロック注射は難しく技術が必要なので、治療を受けるときはペインクリニックなど専門機関を受診するようにしてください。
3-4.手術
頚椎症性神経根症ではほとんど手術することはなく、服薬、リハビリ、注射などの保存療法が行われます。
手術が行われるのは頚椎症性筋萎縮症で、上肢の麻痺がある時に対象になります。手術は骨棘を取り除いたり、神経の通り道を広げたりして、神経の圧迫を和らげることを目的に行われます。
主な手術方法は次の通りです。
- 骨棘除去手術
- 後方徐圧固定術
- 前方徐圧固定術
- 椎弓形成術(脊柱管拡大術)
4.頚椎症性神経根症の東洋医学の治療
頚椎症性神経根症の東洋医学の治療は鍼灸治療になります。鍼灸治療とは鍼とお灸を使って身体に刺激を与え、人間の自然治癒力を高めて身体を治していく治療法です。また、副作用はほとんどありません。
鍼灸治療は歴史が長く、律令時代に中国から伝来し今現在まで伝統の治療法が脈々と受け継がれています。
今では、大学病院などの医療施設でも鍼灸治療を取り入れていて、薬が効かない難治性の疾患に対して鍼灸治療を行っている施設が数多くあります。
詳しくは「頚椎症性神経根症の最良の治療法はこれだ!2千年の伝統、鍼灸治療」を参考にしてください。
4-1.鍼灸治療の治効理論
鍼灸治療の治療効果のメカニズムは解明されていないことが多くありますが、中には科学的に解明されているものもあります。それは以下の通りです。
・鎮痛効果
鍼灸治療を行うと人間が本来持っている痛みを自ら抑える疼痛抑制機構のメカニズムが高まり、痛みを和らげる効果が期待されます。
このメカニズムを使って中国では鍼で麻酔をかけ抜歯をしているところもあります。
・血流改善
鍼灸治療を行うと、治療箇所の血管が拡張する自律神経反射が起こります。
この反射を軸索反射といいます。組織の血管が拡張し血流が増大すると、新鮮な酸素や栄養が運ばれてきて新陳代謝が活発になり組織の炎症を消退させ痛みを和らげることが出来ます。
・免疫力の強化
鍼灸治療は鍼とお灸を使って身体のごくわずかな傷をつけ、その後の身体の様々な反応で身体を治していく治療です。わずかな傷でも身体はその傷治そうと、身体の免疫のメカニズムが働き強くなります。
その結果、身体の自然治癒力が高まり、身体を治す力も強くなり症状が改善されていきます。
5.まとめ
頚椎症性神経根症はとてもつらく、症状を改善する決定的な治療法もありません。唯一改善させる方法は、頚椎症性神経根症のことをよく知ることが大切です。
この記事では、原因、症状、西洋医学の治療法と東洋医学の治療法をご紹介しました。よりあなたに会った治療法を見つけて、早くつらい症状が改善されることを願っております。
当院は完全予約制になっておりますので、来院される際は事前にご予約していただくようお願いいたします。
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2.院長の私自身(勝田)が、
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